COPDの定義, 包括的疾患概念
1. タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入暴露することで生じた肺の炎症性疾患である
2. 呼吸機能検査で正常に復すことのない気流閉塞を示す
3. 気流閉塞は末梢気道病変と気腫性病変が混在し、通常は進行性である
4. 臨床的には労作時呼吸困難, 慢性の咳, 痰であるが、症状に乏しいこともある
世界的に増加するCOPD死亡者数
2020年には世界の死亡原因の第3位になると予測
世界人口の1/5は喫煙、喫煙関連物質に携わっている
1990年 | | 2020年 |
1 | 虚血性疾患 | | 1 | 虚血性疾患 |
2
| 脳血管障害 | | 2
| 脳血管障害 |
3 | 下部呼吸器感染症 | | 3 | 慢性閉塞性肺疾患(COPD) |
4 | 下痢性疾患 | | 4 | 下部呼吸器感染症 |
5 | 分娩に伴う傷害 | | 5 | 呼吸器ガン |
6 | 慢性閉塞性肺疾患(COPD) | | 6 | 交通事故 |
7 | 結核 | | 7 | 結核 |
8 | 麻疹 | | 8 | 胃ガン |
9 | 交通事故 | | 9 | HIV |
10 | 呼吸器ガン | | 10 | 自殺 |
Murray, C.J.L. et al.: Lancet 349: 1498,1997
COPDにおける気管支・肺組織障
Chronic Obstructive Pulmonary Disease(慢性閉塞性肺疾患) とは?
・有害粒子/ガス(タバコの煙、大気汚染)に対する
異常な炎症反応として生じる、慢性の気流制限。
・気流制限は進行性で、また完全な可逆性はない。
①末梢気道の炎症(慢性気管支炎)
②肺胞構築の破壊(肺気腫)
・予防可能で治療可能(preventable & treatable)。
・患者重症度に影響を与える肺外病変をもつ疾患。
COPDの病態

① 細気管支での炎症(慢性気管支炎)
1) 気道炎症・浮腫
2) 過分泌・線維化
② 肺胞隔壁・肺胞構築の破壊(肺気腫)
1) elastic recoil 減少
2) bulla での気管支圧排
COPD患者の肺

air trapping
↓
過膨張肺
↓
横隔膜平低化
↓
呼吸運動制限
↓
労作時呼吸困難
(低酸素によらない)
動的過膨張
健常者とCOPD患者の胸部X線
COPDの治療
1. 原因・増悪因子の回避
1) 禁煙
2) 感染予防(インフルエンザ・肺炎球菌ワクチン)
2. 薬物療法
1) 長時間作用型気管支拡張剤(抗コリン、LABA etc.)
2) 短時間作用型気管支拡張剤(必要時)
3) 重症例は吸入ステロイド追加
4) その他(去痰剤、マクロライド少量長期療法)
3. 理学的療法
1) 腹式呼吸 2) 口すぼめ呼吸 3) 呼吸リハビリ
4. 栄養管理
5. 手術療法(LVRS)
6. 在宅酸素療法 ・ NPPV etc.
7. 併存症の管理・治療
肺の生活習慣病=COPD
Chronic Obstructive Pulmonary Disease とは?
■有害粒子/ガス(タバコの煙、大気汚染)に対する異常な炎症反応として生じる、慢性の気流制限。
■気流制限は進行性で、また完全な可逆性はない。
①末梢気道の炎症(慢性気管支炎)
②肺胞構築の破壊(肺気腫)
■予防可能で治療可能(preventable & treatable)。
■患者重症度に影響を与える肺外病変をもつ疾患。
COPD診断と治療のためのガイドライン(日本呼吸器学会)

特に今日ではCOPDを呼吸器に特化した疾患として限定的に捉えるのではなく、全身性疾患であるとの認識が一般的となりつつあります。この観点から、疾患の重症度は呼吸器系障害のみで決定することなく、心循環系、筋骨格系、心理的側面など全身状態を総合的に把握した上で評価し、‥(後略)
ガイドライン作成委員長 永井厚志
COPD + 併存症
↓
Chronic Systemic Inflammatory Syndrome
全身性炎症性症候群
COPDの病態生理
特に今日ではCあ主に喫煙(活性酸素 / フリーラジカル等吸入)
↓
気管支・肺胞上皮等の損傷
↓
好中球遊走因子やサイトカインの放出
↓
好中球エラスターゼ等の放出
↓
さらなる肺障害、他の臓器障害(併存症)OPDを呼吸器に特化した疾患として限定的に捉えるのではなく、全身性疾患であるとの認識が一般的となりつつあります。この観点から、疾患の重症度は呼吸器系障害のみで決定することなく、心循環系、筋骨格系、心理的側面など全身状態を総合的に把握した上で評価し、‥(後略)
喫煙による健康被害
COPDの表現型
・どちらも炎症から気流閉塞を生じる病態と理解
・気流閉塞は、肺気腫病変と末梢気道病変がさまざまな割合で複合的に作用し生じる
全身性疾患としての COPD
COPDは肺以外にも全身性の影響をもたらして併存症を誘発する。したがってCOPDを全身性疾患と捉えて、併存症を含めた包括的な重症度の評価や管理を行う必要がある。また、肺癌、気胸などの肺合併症にも注意する。
■COPDの全身的影響
・全身性炎症:炎症性サイトカインの上昇、CRPの上昇
・栄養障害:脂肪量、除脂肪量の減少
・骨格筋機能障害:筋量・筋力の低下
・心血管疾患:心筋梗塞、狭心症、脳血管障害
・骨粗鬆症:脊椎圧迫骨折
・抑うつ
・糖尿病
・睡眠障害
・貧血
日本におけるCOPDの状況
・現在日本ではCOPDの潜在患者は530万人と推定されている(喘息患者は約400万人)。
・加齢に伴って増加する男性優位の疾患
- 肺気腫:男/女=10/1、慢性気管支炎:男/女=2/1
- 女性のほうが少ない喫煙量でCOPDになる傾向がある。
- COPD患者の90%以上は喫煙者。
- 実際に診療を受けているのはCOPD患者の10%未満。
・日本のCOPD患者のうち、重症化して在宅酸素療法を行っている患者は約10万人を超えている。
COPD患者は、軽症から活動性が低下する

■COPD患者は、同年齢の健康な
被験者と比して非常に活動性が低い
■この活動性低下は早期のCOPD
でもあり得る
早期診断が重要
自覚症状が乏しいうちに、診断をすべき
なぜならば、早期診断・早期介入により、進行を遅らせることができる
→(本当?)
COPDにおける大規模試験
・UPLIFT試験
- Tiotropium+/-、他の薬剤は継続
- 1秒量の経年低下速度がendpont
- Tiotropiumは1秒量の低下速度に影響しなかった。←併用薬の影響?
- Tiotropiumは、QOL、急性増悪、入院、呼吸不全のリスクを減少させた。
- サブ解析では、stageⅡ(中等度)の患者群では、1秒量の経年低下を有意に抑制した。
→早期介入の有用性を示唆
かくれCOPDを見つけるには

・検診で見つける
・日常診療で見つける
ツール・スパイロメトリー
・ピークフローメーター
・ハイチェッカー
・質問票
まとめ
COPDは末梢気道の炎症から生じる、気流制限を特徴とする疾患(群)である。
COPDは全身性疾患である。
潜在的な(=受診していない)患者は非常に多い。
かくれCOPDを見つけるには、まず喫煙歴と年齢から疑うことである。